娘からのメッセージ --読書感想文--

TEDxTokyoのユース版へのお誘いがあり、娘を連れていこうと思い立った。娘はまだ10歳。 しかし、日々社会とかかわりを持つように色々な経験をさせてきたつもりだし、自分の考えを必ず述べるように育ててきたつもりだ。

 

今回は残念ながら学校行事で行けないが、ユースへの申込サイトの入力にトライしようとしつつ、娘から社会への何かメッセージが無いか考えてみた。

そういえば、毎年コンクール用に作文を書いており、その作文のメッセージを紹介しようと考えた。

まずは昨年、小さな賞をとったものを掲載してみる。 ハンセン病に関してのメッセージだ。

  

カミングアウト」

            四年 Ayaki Kawasaki

 

  あなたは、社会からも人からも、必要とされないと感じながらも、生きていくことができるだろうか。

  私が今回読んだ本は、ハンセン病への差別とたたかっている老人と、中学生になる三奈が出会い、三奈がハンセン病について学んでいく物語だ。

 

   ハンセン病は、ノルウェーのハンセンによって発見された「らい菌」による感染症だ。

ハンセン病は、鼻・目・耳たぶなどに知覚まひ等をひき起こす病気だが、なぜ差別されたのだろうか。それは、衣服でかくせない部分が変形したり、皮ふに目立つ後遺症があったりしたからだ。

 

 三奈が出会った老人も、十四才でハンセン病と診断され、療養所といわれる施設に長い間強制隔離されていた。日本政府は、病気の人を隔離し、社会にもどさないとすることで病気をなくすという考えであったからだ。

さらには、隔離された人のほとんどは、若い人たちなのに、子どもを持つことも許されなかった。

 

 私はこの本を読むまで、ハンセン病という病気があることを知らなかった。昔日本では「らい病」とよばれていたらしいが、その言葉も知らなかった。そしてそのような施設がつい最近まであったことすら知らなかった。

 

  私はこの本を読んですぐに、ハンセン病のことを母にたずねた。

「ねぇママ、ハンセン病って知ってる?」

すると、母の答えはおどろくことにこうであった。

「ハンセン病はかんたんにはうつらないし、治療の方法さえ知っていれば、恐れる病気ではないんだよ。ママは若い時にたくさんの元ハンセン病の人と会ったことがあるよ。」

 

  母はインドに留学していたことがあり、大学時代にマザーテレサの施設で、一年間研修していたことがある。その時、たくさんのハンセン病かんじゃとも接していたそうだ。

 

  それではなぜ日本では、つい十年前まで隔離されるようなことがあったのだろうか。私はふしぎで調べてみた。すると、らい予防法は1996年(平成八年)にやっと廃止されたのだった。なぜそれほどまでに遅れたのかというと、ハンセン病患者を隔離するのと同時にハンセン病への関心まで隔離してしまったからだ。だから世界の国々に注意されても、聞く耳を持たず、国の考えを変えようとはしなかった。もし多くの人が関心をもって真剣に科学てきな目で取り組んでいたとすれば、少しでも早く、らい予防法が廃止されていたかもしれない。

 

  隔離とは、社会からも人からも、必要とされないということを宣告されるようなことだ。たとえば、今突然私が隔離されたとしたらどんなことができなくなるだろうか。

 

  今、学校でいっしょに遊んでいる友人たちと会えなくなる。家族と楽しい時間がすごせなくなる。行きたい学校に行けなくなる。なりたい職業につけなくなる。というように、考えれば考えるほど様々なことができなくなる。

  一人の人間にとってはこんなに大変なことなのに、一生懸命取り組まなかった社会に、私はいかりがこみあげてきた。どうして社会は、本当のことを知ろうとしなかったのだろう。どうして病気が治っても受け入れてくれなかったのだろう。どうして、らい予防法が廃止されたにもかかわらず、家族すら受け入れようとしなかったのだろう。すべては人間の心の中の差別という気持ち。そして無関心。

 

 三奈が思ったことを私も思う。一番の問題は、みんながハンセン病という病気をきらうあまり、病気になった人間まできらうことだ。そして、きらっただけでなく、そういう人たちをのけ者にしてきた。そしてのけ者にすることで、その問題への関心も無くしてしまった。つまり、無関心。

 

 私はマザー・テレサの本を何冊も読んできた。マザー・テレサはこんなことを言っている。

「愛の反対は無関心」

 この言葉には、何かずっとかんがえさせられるようなものがあった。しかし、この本を読むまで、私には、この言葉の意味が理解できなかった。

 

 今回、ハンセン病についての本を読んだことで少し意味がわかったような気がした。

私は思う。これからの未来、どんな人にでも、愛、そして関心を持って生きてゆける社会をつくっていきたい。

 

 島田和子「カミングアウト」

新日本出版社